ハノイの老舗フォー店では、客が席で待つのではなく、列に並んで注文と支払いを済ませ、出来上がった丼を自分で運ぶ。記事はこの方式を配給時代の食堂になぞらえる。狭い店内で店員が各卓を往復する代わりに、客の移動を調理窓口へ集約し、混雑時の順番を保つ仕組みである。

人気店の味だけが列を生むのではない。注文、会計、受取を一方向につないだセルフサービスが、客を店の作業工程へ組み込む。並んだ人は食事を待つだけでなく、配膳の最後の区間を担当する。フォーの列は、限られた床面積で大量の客を動かす運営方法そのものだった。