1972年のロンドン、大英博物館。古代エジプトの少年王ツタンカーメンに会うため、観客の列は展示室のある建物の中から中庭へ、さらに歩道へと伸びた。ロンドン博物館には、列に並ぶあいだ座り込んだ家族を写した写真が残っている。黄金の副葬品を見に来た人々の姿を、写真はきらびやかな鑑賞場面ではなく、足を休めている時間として記録している。
『ツタンカーメンの秘宝』展は、墓の発見から50年に当たる年に開かれた。当初は3月30日から約6か月の予定だったが、反響を受けて12月まで延長。ロンドン博物館の資料では、来場者数は169万4,117人に達した。大英博物館にとって、それまでで最も多くの人を集めた展覧会になった。考古学の資料が、現代の都市の人通りまで変えたのである。
1922年にハワード・カーターらが発見した王墓は、盗掘の被害を比較的免れ、多数の品々を伝えたことで知られる。だが1972年に並んだ人々が待っていたのは、単に金色の工芸品ではない。発見の報道から半世紀を経ても失われなかった『実物を見たい』という気持ちだった。新聞や図録の写真ではなく、同じ空間で品々を見るために、数時間を費やした。
歴史の時間には、ときどき妙な縮尺がある。数千年を超えて残った品々を見るには、まず自分の今日の数時間を差し出さなければならない。博物館の内と外を折れ曲がる列は、古代への入り口であると同時に、1972年のロンドン市民の日常そのものでもあった。列の途中で腰を下ろした家族もまた、この展覧会の歴史をつくった人々だ。
展示を見る時間より長い待機が生じても、人々は古代の品々を数分見るため列を保った。ツタンカーメン展では、博物館の入口そのものが現代の都市文化を記録する展示になった。
ロンドン博物館の写真記録では、1972年のツタンカーメン展の列は館内一階から前庭を抜け、歩道まで伸びた。会期は人気のため12月まで延長され、来場者は1,694,117人に達した。座って待つ家族の姿は、その巨大な数字を一日の身体感覚へ戻してくれる。
