2022年9月、英国のエリザベス2世の棺がロンドンのウェストミンスター・ホールに安置されると、弔問を希望する人々の長い列がテムズ川沿いに延びた。英国で「The Queue」と呼ばれたこの列は、単なる入場待ちではなかった。最後の別れを告げる数分のために、歩き続け、立ち止まり、再び歩くという時間を引き受ける行為でもあった。
弔問には警備と人数管理が必要だった。列の長さだけでなく、気温や体調、夜間の移動も参加者にとって現実の問題になる。待機時間の目安は変動し、誰もが同じ負担で参加できたわけではない。公的な追悼の場が開かれていても、そこにたどり着く体力や時間の余裕は人によって違う。
興味深いのは、列そのものがニュースになったことだ。棺を見るために並ぶ人々を、さらに別の人々が見守った。王室への思いは人それぞれであり、列にいた人の感情を一つにまとめることはできない。それでも、ひとりずつ前へ進む仕組みが、大きな国家行事を個人の別れの時間へと変えていた。
弔問列の到達点は長い滞在ではなく、棺の前を通る短い一瞬だった。その一瞬を公平に分けるため、ロンドンの街路と公園が何キロもの待機場所に変わった。
