1937年5月12日、英国王ジョージ6世とエリザベスの戴冠式を沿道で見るため、多くの人がロンドン中心部で夜を越した。写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンがトラファルガー広場の階段で撮った記録には、長時間待つ観衆が写る。式後の巡幸路は六マイルを超え、当時として最長だった。

沿道警備には約2万人の警察官、行列には3万2千人を超す兵士・水兵が関わり、ヴィクトリア・エンバンクメントでは約4万人の学童が待った。観客の待機は、王室儀礼を都市全体へ展開する巨大な観覧席を路上につくった。

この待機では、切符も椅子番号もない場所を身体で確保する。何時間も前から同じ地点にとどまることで、数分間通過する王室行列を見る権利を自分でつくる。戴冠式の秩序は、公式行列だけでなく、それを待つ沿道にもあった。