2020年7月29日、ペルーの首都リマ南郊ビジャ・マリア・デル・トリウンフォでは、新型コロナウイルス患者の家族が酸素ボンベを充填するため長い列をつくった。現地報道は、市が無料で行う充填を求め、数十人が並んだと記録している。待っていた人自身ではなく、自宅や病床にいる家族の呼吸が列の目的だった。
医療用酸素の不足は、感染者数の増加とともに深刻になった。ボンベを所有していても、中身を補充できなければ治療には使えない。そこで自治体の充填場所が、家庭と医療資源を結ぶ接点になった。列は商品購入のためというより、限られた供給設備を一人ずつ利用するための順番だった。
同じ形の列でも、待つ時間の意味は状況によって大きく変わる。この列では、順番が遅れることが家族の健康に直結した。だからこそ、写真に残るボンベと人びとの間隔は、パンデミック期の医療不足が家庭へ移された現実を具体的に伝えている。
