2024年4月20日の英国レコード・ストア・デイに、テイラー・スウィフトのファンがレコード店の前へ並んだ。目当てはアルバムそのものだけではない。限定数の『The Tortured Poets Department』に、本人の机から届いたという体裁の手書き風メッセージが付いた。アルバムは公式の限定盤ではなかったが、手紙が店頭購入の理由になった。
ロンドン・ソーホーのRough Tradeでは、需要を見越してアルバムを数百枚追加発注した。英国では270を超える店がイベントに参加し、主催者は独立系店舗へ970万ポンドの効果を見込んだ。音源自体は同時期にSpotifyで1日3億回を超えて再生されたが、店頭の列が求めたのは、配信では受け取れない紙の特典と物理盤だった。
同じ曲を聴くなら列は不要である。それでも人が並んだのは、音楽を『持つ』行為に、発売日の場所と限定された紙片を結びつけるためだった。デジタルで最速に届く時代に、希少性はレコードの溝ではなく、同封物と店頭の順番に置かれていた。
