1919年、ギリシャ北部のヴォデナで、村の避難を前に人々がアメリカ赤十字のパンを待った。米国議会図書館の写真目録は、場面を「避難前、赤十字のパンを待つ村人」と説明している。列の先にあったのは旅の記念品ではなく、住み慣れた場所を離れる前の食料だった。
避難は地図上では一本の矢印に見える。しかし、その矢印が動く前に、人々は配給の順番を待たなければならなかった。写真が確実に示すのは、場所、避難という状況、パンの提供者、そして待っている村人である。一人分の量、各人の待ち時間、その後の行き先までは分からない。
この列を劇的な物語へ作り替える必要はない。出発前のパンという具体的な事実だけで、移動が始まる前にも生活の段取りがあることが分かる。非常時の列は、支援物資を公平に渡す仕組みであると同時に、人々が次の一歩へ進むまでの時間そのものでもあった。
