フェズ旧市街の朝、家庭でこねたパンが板に載せられ、近所の共同窯フェランへ運ばれる。家庭にオーブンが普及した後も、この窯は地域の暮らしに残った。2011年のモロッコ紙は、利用者が列に並び、焼き上がったパンを受け取るまで待つ必要があると報じている。
窯には複数の家のパンが集まる。職人は形や印を見分け、焼成の順を整え、持ち主へ返す。家庭で始まった仕事が共同の設備へ渡るため、パンは人の代わりに順番を持つ。
同じ窯の熱を分け合う列は、効率だけの仕組みではない。誰の家にも朝食があり、どの生地にも持ち主がいる。パンを焼く短い待ち時間が、近所をゆるく結んでいる。
