海外へ働きに出る準備は、空港より前に始まる。バングラデシュでは、移住労働者を目指す人が政府の登録と生体認証を済ませ、デジタル・スマートカードにつながる情報を記録する。国際移住機関(IOM)と国際労働機関(ILO)が支援した2018年の現地調査は、その手続きを抽象的な「申請」ではなく、番号と順番のある待ちとして記録している。

申請者は用紙に個人情報を書き、手数料を払い、旅券と渡航先の査証の写しを添える。その後、サービスを受ける順番を示す通し番号付きのトークンを受け取り、入力、写真撮影、指紋採取へ進む。窓口は地方雇用・人材事務所(DEMO)や移住労働者向け銀行プロバシ・カリヤン銀行(PKB)に置かれ、女性の移住希望者には専用列が用意されていた。報告書によれば、列の長さによって一連の手続きは数時間から一日かかり、週の最初の二営業日は特に混み合った。

この列の先にあるのは、指紋の登録だけではない。仕事、送金、家族の暮らしへ続く国外就労の入口である。だからこそ、紙の番号札は小さくても重い。世界のどこでも窓口の順番を待つ姿は似ているが、ここで一つ番号が進むたび、誰かの生活が国境を越える準備も一段進んでいた。