1964年、南太平洋のトンガにあるクイーン・サローテ・カレッジで、女子学生が天然痘の予防接種を待って列をつくった。CDCの写真資料PHIL 22247には、白衣の看護師が多人数用の空気圧式注射器ペド・オ・ジェットを持ち、生徒が自分の番を待つ様子が記録されている。

この器具は、針と注射筒を一人ごとに準備する方式とは異なり、高圧の細い噴流でワクチンを皮膚へ届ける。多数を短時間で接種する集団予防接種に向いていた。列は混雑の結果ではなく、同じ処置を連続して安全に行うための生産ラインに近い。先頭で一回の接種が終わるたび、次の生徒が装置の前へ進む。

写真説明からは、生徒数、所要時間、接種が義務だったかどうかは分からない。学校の一場面をトンガ全体の経験に広げることもできない。それでも、誰が、どこで、何を待っていたかは明確である。私立女子校の構内で、生徒たちは看護師による天然痘接種の順番を待っていた。

予防接種の歴史は、薬そのものだけでなく、どう大勢へ届けるかという器具と動線の歴史でもある。ペド・オ・ジェットは列をなくしたのではない。むしろ列を一定の速度で処理できる形へ変えた。写真の中心に写るのは注射器だが、その性能を公衆衛生へ変換したのは、装置の前に整然と続く生徒の順番だった。 同じ天然痘対策でも、村を巡回する接種班と学校内の集団接種では列の作り方が異なる。学校では生徒という既存の集団と校内空間が、そのまま接種対象者の把握と順序づけに利用された。