2015年のギリシャでは、金融危機を受けて銀行休業と資本規制が導入され、ATMの前に現金を求める列ができた。口座に残高があっても、今日使える紙幣の額は制限された。金融政策の抽象的な言葉が、日々の買い物や支払いの具体的な問題に変わった。

同じ列でも、年金で暮らす人、商店を営む人、旅行中の人では切迫した理由が違う。数字としての預金と手に取れる現金の距離を、ATMの前の待ち時間が可視化した。

資本規制は金融システムを守る措置として説明される。しかし年金生活者、商店主、旅行者にとっては、その日の支払いをどうするかという問題になる。ATMの列は「預金がある」と「今日使える現金がある」の差を可視化した。同じ列にいても必要な金額や代わりの支払い手段は違い、不安の理由まで一様だったわけではない。

引き出し制限下では、口座残高とその日に使える現金が別の数字になる。ATMや銀行の列は、所有しているはずのお金を生活費へ変えられる上限を、毎日確かめる場所になった。

2015年ギリシャの資本規制を扱うロイター報道は、ATMと銀行の列を直接記録している。