2016年12月、ベネズエラ政府は最大額面だった100ボリバル紙幣を急きょ流通から外そうとした。新しい高額紙幣が十分に届く前に旧紙幣の期限が迫り、銀行には巨大な列ができた。ロイターは、現金不足、各地の略奪や抗議、少なくとも一人の死亡を伴う混乱を報じている。紙幣の公式価値は闇市場レートで約4米セント。額面は最大でも、急速なインフレのなかで購買力はすでに小さかった。
問題は、古い紙幣を新しい紙幣へ交換すれば済むほど単純ではなかった。人口の約40%は銀行口座を持たず、電子決済へ切り替えられない。食料、ガソリン、クリスマスの買い物にも現金が必要だったが、500、2,000、20,000ボリバルの新紙幣を積んだ航空機の到着は遅れた。政府は100ボリバル紙幣の廃止を麻薬密売や国境の現金取引への対策と説明し、コロンビアとブラジルとの国境も閉じた。
12月17日、ニコラス・マドゥロ大統領は期限を翌年1月2日まで延ばした。列に並んだ人々が待っていたのは、将来価値が上がる資産ではない。翌日には受け取りを拒まれるかもしれない紙幣を、決済可能な形へ移す機会だった。普通の銀行列では、紙幣を手に入れることが目的になる。この列では反対に、手元の紙幣を期限内に銀行へ戻すことが目的になった。 期限延長は、混乱の原因を消したのではなく、交換のための時間を増やしたにすぎない。現金を大量に運ばなければ日用品も買えない高インフレ下では、紙幣の交換窓口そのものが生活インフラになっていた。
