1989年12月28日、ルーマニア革命でチャウシェスク政権が倒れて五日後、ブカレストでは何百人もの人々が肉や果物を買う列に並んだ。倉庫から小売店へ食品が出始め、子どものなかにはオレンジやバナナを初めて味わう者もいた。ある大学生は、自分もオレンジを三年間食べていなかったと語った。
旧政権は対外債務返済のため農産物を輸出し、輸入食品やコーヒーは一般市民へほとんど届かなかった。革命後の列も不足の列ではあったが、店に運び込まれた白い箱は、それまで国外へ向いていた流通が市民側へ反転したことを見せた。並ぶ対象が初めて見る果物だったこと自体が、政治体制の変化を食卓の尺度で示している。
