2023年8月22日、チュニス旧市街バブ・スイカのパン屋へ駆け込んだ女性は、その日すでに六軒目だと列の客に告げた。ここにもパンがなければ手ぶらで帰るしかない。別の地区では午前11時に約40人が店外で待ち、多くが華氏98度(約37度)のなか一時間ほど並んでいた。粉が尽きたと店主が告げると、客は次の店を探して散った。
不足の背景には、国家が小麦の輸入と流通を一元管理する仕組みがあった。外貨不足で輸入代金を払えず、小麦を積んだ船が荷揚げを見合わせ、認可パン屋への小麦粉供給は通常の一〜二割まで落ちた。干ばつと高温で国内収穫も六割減り、25万トンに縮んだ。
補助金付きパンを安く保つ制度は、粉が届かなければ機能しない。人びとは値札ではなく、まだ焼ける店を探して一日の予定を組み替え、列が消えればパンも消えたことを知った。
