2022年3月、バングラデシュの首都ダッカでは、国営Trading Corporation of Bangladesh(TCB)のトラックを待つ長い列が各地にできた。トラックが売るのは、市価より安い食用油、レンズ豆、砂糖、タマネギなど。物価高騰のなか、低所得層だけでなく中間層にも、この移動販売が家計を守る選択肢になっていた。

モハンマドプールでは、ある女性が4時間待ち、前に残る人が7人になったところで商品が尽きた。ライヤーバザールでは、9か月の子どもを連れた母親が数時間並んだ。列は販売の開始時刻や在庫量が読めず、待てば必ず買えるという約束さえ持たなかった。

この行列の売り場は建物ではなく、街を移動するトラックである。安価な食料を積んだ車が到着する場所と時間に、人々の予定が合わせられる。最後の数人の目前で在庫がなくなる瞬間は、価格の差が単なる節約ではなく、その日の食卓を左右する大きさだったことを示している。