2019年4月、バンコクで開かれたBNK48の握手会では、ファンは推しのメンバーごとに指定されたレーンへ並んだ。参加者の記録によれば、人気メンバーの列は会場内だけでは収まらず、外側の待機区域へ二列以上伸びた。列が長すぎて最後尾が分からなくなると、スタッフは最後の人にメンバー名の札を持たせ、新しく来た人へ順番に手渡させた。
握手券一枚でメンバーと向き合える時間はごく短い。だからこそ、ファンは会場図と事前発表されたレーン番号を確認し、どの列へ限られた券を使うかを決めた。長い列では外側から内側へ移動し、スタッフが人数と時間を調整した。握手という数秒の対面を成立させるために、待つ場所そのものが細かく設計されていた。
この列の主役は、ステージを見る大群衆ではなく、一人ずつ順番を受け渡す仕組みである。最後尾の札が人から人へ移るたび、見えにくい列の境界が保たれる。アイドルとファンの近さを商品にする文化が、同時に厳密な順番管理を必要とした事例である。
