2021年、インドネシアの新型コロナワクチン会場で、人ではなくサンダルが一列に並ぶ写真が話題になった。受付開始前、参加者は履物を置いて順番を示し、自分は日陰などで待った。靴を脱ぐ習慣が身近な社会だからこそ、持ち主との対応が周囲にも読み取りやすい札になった。

列の目的は到着順を保つことだが、身体を同じ場所へ縛り付ける必要はない。強い日差しや密集を避けながら、位置だけを残せる。もちろん履物が動かされたり、持ち主が戻らなかったりすれば争いの種になるため、この方式は周囲の暗黙の合意に依存する。

番号札を発行する機械がなくても、人々は手近な物で列を外部化する。サンダルは公的な証明書ではない。それでも、その場の全員が意味を認めれば順番を保存できる。行列とは人の形ではなく、「次は誰か」を共有する約束だとよく分かる場面だった。

サンダルの列は、順番を守るために身体を炎天下へ固定する必要がないという現場の工夫だった。番号札が配られる前でも、誰の次かを履物が示し、持ち主は少し離れて待つことができた。