2016年、インド東部ジャールカンド州の配給店で、約50人が食料を受け取る順番を待っていた。電子POS端末は受給者の指紋をAadhaar番号と照合する。だが通信が切れたり、農作業で摩耗した指紋を読めなかったりすると、認証は進まない。報道では午後になっても十人ほどしか処理できない店があった。

紙の配給カードだけなら、店員が目で確認して次へ進めた。生体認証は不正受給を防ぐ目的で導入されたが、失敗した人は列の脇で再試行を待たされ、後ろの人が先に受け取ることもある。到着順とは別に「機械が認識できる順」が生まれた。

技術は列を短くするために使われることが多い。しかし本人であることを厳密に証明する仕組みは、証明できない身体を例外として外へ押し出す。配給の対象者であることと、端末に対象者として読まれること。その二つの間に、もう一つの待ち時間ができた。

この店では、指紋が読めない人は列の後ろへ戻るのではなく、認証できる人だけが進む流れの脇へ取り残された。配給権を持つことと、端末に本人だと認められることの間に、もう一つの順番が生まれていた。