1987年12月1日、アムステルダムの旅券窓口に人々が列をつくった。オランダ国立公文書館由来の写真資料は、その理由を「翌年、旅券が大幅に高くなる」ためと説明する。海外旅行そのものではなく、公的書類の価格改定が、年末の行政窓口へ需要を前倒しした。
資料に残るのは撮影日、場所、旅券の値上げ前という事情で、旧価格、新価格、待ち時間、人数は示されていない。したがって、値上げ幅や節約額を推測で加えない。写真家はバルト・モーレンダイク、資料はAnefo写真コレクションに属する。
旅券は必要になった日にすぐ作れる商品ではない。申請、本人確認、発行という行政処理があり、窓口が一度に扱える人数にも限りがある。価格変更の期日が加わると、本来は別々の日に来たはずの人々が同じ月へ集まる。1987年のこの列は、将来の費用を避ける判断が、現在の待ち時間へ変換された記録である。
