1970年の日本万国博覧会(大阪万博)には、183日間で6,421万8,770人が訪れた。116のパビリオンが並ぶ会場では人気館への待機が日常化し、米国館では月の石を見る人の列が象徴になった。調査記録では、同館を見た回答者の38%が2時間以上待ったと報告している。

来場者は、目の前の列だけでなく、会場全体の混雑を判断しなければならなかった。そのため会場には、各パビリオンの待ち時間を知らせる案内板が設けられた。いまテーマパークや駅で見慣れた仕組みが、巨大博覧会で人の流れを分散する情報装置として働いたのである。

大阪万博の列が特別なのは、未来技術を見る待機そのものが管理技術の実験になった点にある。月の石や映像展示だけでなく、「次にどこへ並ぶか」を数字で選ぶ体験までが、6400万人規模の博覧会が見せた未来だった。