1993年7月のモスクワで、国外旅行用の旅券書類を求める人々が何日も列に立っていた。『The Independent』の同時代報道は、セヴァストポリスキー地区の旅券事務所で、ドイツへ行きたいオリガ・コザコワが二日目も待っていたと伝える。しかも彼女がその日に目指していたのは、担当者に会うための待機者名簿に名前を載せることだった。

ロシアでは1993年1月から国外旅行をめぐる制度が改められたが、窓口には申請が殺到し、新しい自由と古い官僚制が同じ廊下でぶつかった。国境を越えたいという希望は大きくても、最初の一歩は小さな窓口の順番だった。制度が変わる速さと、実際に人が通過できる速さの違いを可視化した行列である。