海を渡り終えたあとにも、もう一つの「入口」があった。20世紀初頭、ニューヨーク港のエリス島に着いた移民たちは、登録室へ向かう長い列に入り、歩き方や呼吸、目や皮膚の状態まで短時間で観察される「ライン・インスペクション」を受けた。国立公園局は、二階の登録室へ入る長い列の中で医師が一人ひとりを診たと説明している。国立公文書館にも、1923年に到着者が検査列を進む写真が残る。
これは船の検疫一般を描いた話ではない。記録が直接示すのは、エリス島の建物内で行われた移民の健康検査である。列は人を順番に医師の前へ運ぶ仕組みであり、歩きながら観察されること自体が審査の一部だった。異常が疑われると、その先の詳しい検査へ回される可能性があった。
大広間を進む列には、長い航海を終えた家族や単身者がいた。しかし、個々の人が何を話し、何を恐れたかは資料から一律には語れない。確かなのは、港へ着いた時点では入国への移動が終わらず、整然と進む身体検査の列が新生活との間に残っていたことだ。
