20世紀初頭のカイロでは、公共水栓の前で水を待つ人々が写真に残された。カリフォルニア大学リバーサイド校のKeystone-Mast Collectionには、1900〜1935年にエジプト各地の水栓を撮ったステレオ写真があり、カイロでは容器や山羊皮袋を持つ人々が順番を待つ。少なくとも7人が一列に立つ場面や、前の人が給水している間に次の人が袋を構える場面も確認できる。
列を生んだのは、水のない都市ではなく、水道網が不均等に広がった都市だった。カイロ水道会社は19世紀後半から新市街を優先して管路を延ばし、人口密度の高い旧市街では公共水栓が少なかった。人々は水のある場所まで歩き、重い容器を満たす一人分の時間を順番に引き受けた。水売り、街路の散水を担う労働者、家庭用の水を求める住民が、同じ設備の前に並んだ。
旧記録の「19世紀」は水道会社の成立期を示す背景として重要だが、行列を直接写した資料は1900〜1935年に属する。国、都市、公共給水という対象を変えず、年代を写真資料に合わせて修正した。近代化は待ち時間を消すのではなく、一本の水栓の前へ集めることもあった。
