タイの公共施設で撮られた写真には、廊下の床へサンダルや靴が長く並び、持ち主たちは壁際の椅子に座っている。バンコク都の行政サービス改善資料にも、この「人の代わりに履物を置く列」が紹介された。先頭へ向かって蛇行するのは身体ではなく、順番を預かった日用品である。
暑さの中で立ち続ける必要がなく、狭い窓口前の密集も避けられる。寺院や家庭へ入る際に靴を脱ぐ習慣が広く理解されているため、履物を本人の代理と読むことにも抵抗が少ない。ただし公的な番号札ではなく、他人が動かさないという信頼と、呼ばれた時に戻る注意が必要だ。
この方式が面白いのは、列の目的と形を切り離した点にある。行列の本質は立っている姿ではなく、到着順についての合意である。靴が順番を保持している間、待つ人は休める。身体を列から解放しながら、社会的な約束だけを床に残した。
番号札なら管理者が順番を保証するが、靴の列では参加者全員が保証人になる。設備費をほとんど必要としない代わりに、合意が崩れた時の裁定者も曖昧である。
