ガーナの乗合ミニバス「トロトロ」では、終点型の駅で車両が満席になってから出発する方式が広く見られる。乗客は行き先別の列で順に席を埋めるが、最後の一席が売れる時刻は時刻表に書けない。早く乗れば座席は確保できても、出発まで長く車内で待つことがある。

運転手側には空席のまま走る損失を避ける合理性がある。運賃を低く保つ小規模事業では、一便の収入を確実にすることが重要だ。一方、利用者の待ち時間は需要に左右される。朝の繁忙時にはすぐ満席になり、閑散時には時計が進んでも車は動かない。

ここで列が配っているのは乗車順だけではない。先に来た乗客も、後から来る見知らぬ乗客の到着を必要としている。最後の一人は遅刻者ではなく、全員を出発させる鍵になる。満席という出来事が、紙の時刻表の代わりを務める交通である。

トロトロの出発時刻を決めるのは時計ではなく、最後の席を埋める乗客である。早く来た人ほど早く出発できるとは限らず、一人の到着が車内全員の時刻表を完成させる。